OSC東京:出展者の反省と総括

9月9日-10日の2日間にかけて東京・日野市の明星大学にてOSC東京(秋)が開催されました。 個人的には5回目のOSC参加、出展者側としては初めてのOSCとなりました。アマチュアユーザとしての新たな一歩です。

実は今回、OSC運営側の前日準備要員として来場者向け配布資料準備や会場設営作業に加えていただきました。 飛び入りにも関わらず宮原しゃちょうに「いいよ!」とご快諾頂き、社長や社員さん、Akkieさんその他メンバと一緒に作業を進めるなかで、OSC裏方として動いている方々の背負ってきたものを少しだけ感じることができたように思います。 (作業も1人分早く終わったと信じたいところです…)

「ネタが練られていないから発表しない」!??

前日準備も無事終了した帰り際、Akkieさんと交わした会話が深く印象に残っています。

「Akkieさんは、今回なにか発表するんですか?登壇されるとか…」 「今回は登壇はしないですね…ネタも練れていないですし、出展だけに留めてます」

Akkieさんともあろう方が、こうも自分自身の発表のあり方に細心の注意を払っているということに、小さな衝撃を受けました。 テレビ&雑誌にも登場し、名前も知られていて開発成果や出展の質も申し分ない方であっても、発表内容には徹底的にこだわっている… 「とりあえず、表に出そう」という軽い考えでOSC露出を始めた私とは随分対象的だったため、正直なところ自分の安直さを暗に指摘されたようで恥ずかしい思いでした。 しかもAkkieさん、懇親会ではちゃっかり発表(会場爆笑)してるという、書籍販売・実演・懇親会での発表と、ネタの出し方を選びつつ実に上手に場を盛り上げる方だということが判明。 相当なツワモノでした。スタイルを模倣するかはともかく、こういう感性はぜひ見習いたいところですね。

東海道らぐブースにて、出展者側にすわりました!

ネタも展示物も十分に練られていないのが現状でしたが、取り敢えずせっかく東京にいるので参加しよう!ということで、今回のOSCでは東海道らぐの中の人扱いで参加しました。 実演環境のベースに用意したのは、名古屋市内のジャンクPC店で手に入れたOSなしラップトップ (TOSHIBA Dynabook R731/E ,Intel Core i3 2nd gen., 4G RAM, HDD 128GB) です。Gentoo LinuxKDE plasma デスクトップを導入し、libvirtの仮想ネットワークを設定、lXCの非特権コンテナで比較的安全でクリーンな実験&実演環境を準備しました。 (FireDuckOSのビルド環境も入れましたよ!)

実演パターンは3通り・・・のはずが

この実機ですが、実のところ動かせませんでした。 渋谷で一泊した折にACアダプタを忘れてきてしまい、電池残量20%を切った当日早朝に気づくという失態、お恥ずかしい限りです。 ひとまず自己紹介用のスライド2枚をサブマシンとして持参していたVAIOラップトップ(2011年製 Intel Atom Z550, 2M RAM, 64GB eMMC)側に移し、インストール済みのArch Linux 32bit (現行Archから昨年11月ごろにfork) を用いてできる限りのデモを行うことにしました。実験用途としてBusybox/Ubuntu on lxc を投入済みであったため、この機体の上でかんたんなデモが行えれば展示としては辛うじて成立するだろうと判断、 東京にいられる最後の一日を大切にする思いで出展者デイズはじめの一歩を踏み出した次第です。

ネットワークに繋がらない謎の現象(不覚にも無線スイッチOFFを見逃す)にも見舞われ、ようやく10時過ぎに接続、 会場にてfirefox, e2pdfviewをDL、LibbreOfficeは以前起動せずに苦労したので、ひとまずコンテナ起動確認・・・ん?起動しない? そんなこんなしているうちに、あっという間の昼.LT開始の時間となってしまいました。 スライド修正もままならず、ゆるふわ系の自己紹介スライド2枚+セキュアOS実演という、アンバランスな構成のまま…これはまずい。

LT, 場を盛り上げる話題を提供できず、今回は大反省です(個人的には前回よりも酷かった&実際に不評)。 発表時に資料pdfが出てこないという椿事も起こしてしまい、皆さんの発表時間&休み時間をも圧迫してしまいました。 東海道らぐのLTを聞きに来ていただいた方に、もっと楽しんで、エキサイトしていただけるような発表がしたい…。 せめて最新情報に絡めたり、独自の開発/検証成果をぶち上げたりして目を引き耳を楽しませるようなものを入れないと LTとしては残念なものになってしまうなと、壇上を降りながら悔しさを噛みしめるわたしでした。

密度の濃いお昼ご飯〜石と板の話で盛り上がる

慰めというか、お叱りも併せて少しほど小江戸のみなさんにお言葉を頂けたのは幸運でした。 やはり「らぐ」として人を惹きつけることもしなければ。そう思い直すなによりのきっかけになりました。感謝です。 そして東海道勢・小江戸らぐメンバの皆さんとご一緒してのおひる。そういえば今更ですが、写真を撮り忘れています。次回はきちんと撮っておかないと・・・

概ねカレーで統一された食卓にほたさんと私を除けば重鎮勢揃いの感(hota氏もある意味重鎮かも)。 カレーをつまみつつ、らぐ界隈の話からハードの話へ。 基盤とかFPGAとか開発体制のお話とか、あまりにも関心を惹く話題に食べ物が喉を通らない・・・。 個人的にはルネサスSHアーキテクチャの末路についてのお話が忘れられません。(別にオフレコではないと思いますが、割愛します

さらに小ハプニング要素として、隣にいらした小江戸メンバに問いかけた折に

私)「小江戸の面さんにお会いしたいのですが・・・」

答)「はい、わたしが面です」

まさかの事態に絶句しそうになりながらも、セキュアOS周りでいつも勉強させて頂いていること、JSOSS-SIGのめざす方向性などについて、 率直にお話させて頂きました。これで安心してslack側でも発言できそうです。(ほんま大丈夫かいな

会場を漂流、某氏に2度もぶつかる。

後は時系列がとびとびですが、取り敢えず最低限行かなければならないところにまいりました。 勉強になることばかりでした。以下、聞き書きと所感の抜粋:

VDJ: 「lxcの時代は決して終わっていない」 Ubuntuベースの基幹システムという堅い地盤もあり、lxc/lxdの将来性は決して絶たれていないとのこと。 やはりVDJさんに言っていただけるのは安心です。 「lxc/lxdは退役した」的な世間の言いまわしに怯えず、lxcベースでいいものを作って参りたいところです。

LibreOffice: えのきさんのところまでご挨拶に向かう。 以前、えのきさんから「LibreOfficeでも翻訳やってるよ」とのお言葉を頂いていました。 研究室を出てから時間も経ってきて「このままだとまともに翻訳できん頭になってしまう」という危機感もあったため、 取り敢えず小さいところからでも翻訳に関与したいと思っていました。丁度日本語翻訳PMの小笠原さんがいらしたため即決。 libreoffice翻訳に徐々に関与するということで、Web翻訳ツールのpootleへの登録も済ませました。 やはり、責任を負って翻訳を出せる場所があるのはいいなと、心からそう思います。 LibreOfficeのみなさん、ありがとうございました&今後ともよろしくおねがいします!

えびじゅんさん/NBUG :Allwinner/BCM ボードやラズパイ/NanoPiに移植したNetBSDの現物展示。 シリアルポート経由のOS載せ替え方法なども簡潔にご紹介いただきました。 FreeBSD/OpenBSD方面で手一杯だった私ですが、小型の基盤にOSを載せる場合にはDebian/ArchLinuxよりもNetBSDのほうが良いのではと 思えてきてしまいました。脇にいた高専生がBSDのドライバ定義ファイルについて教えてくれたのに肝心の名前を忘れてしまった… Theo De Raadt氏, めっちゃいい人だそうです。すっかり風評通りの勘違いをしていた私です。

MyDNS+α: 「温泉合宿、今年こそ参加で!」 いや〜少し日程調整が必要でして(すでにスケジュール埋まってました…) Deprecated system を如何に更新するかというケーススタディとして、格好の題材もご紹介頂きました GPL準拠で実験・検証環境として利用させていただきます。(まだここでは直接言及いたしませんが・・・そのうち記事にします

その他:

 - 行けたらTOPPERSにも行きたかったのですが、不思議とここには毎度行けません。本拠地名古屋だと近すぎるからかも?
 - なぜかGentooのブースに行き損なったことだけは本当に口惜しい。もいちど手元でしっかり触ってから来いということか...
 - デージーネットさん、会期中に伺えなかったのは心残りです。
 - その他、企業ブース方面は今回ほとんど回れませんでした。一杯いっぱいでした。

こういう時こそ、安心して置いておける展示があるといいですね。

懇親会

大盛況の懇親会により、見事OSC東京秋の1日目は閉幕しました。 ここで、思い出したように取り始めた写真がこれ

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私は翌日に名古屋の用事が控えていたため、OSC会期としては前半のみの参加。ここで皆さんとはお別れということになりました。

まとめ

思うところが多すぎて、簡単にはまとめられない2日間(前日準備+OSC初日)でした。

嬉しかったこと

おもさん、おおたさん、Kapperさん、フリックさんには、今後の活動・開発の方向性について貴重なアドバイスを頂きました。心より御礼申しあげます。 OpenSUSE, xrdpの方 (ごめんなさい、お名前控えそこないました)には、コミュニティ運営のHOWTOについて立ち入った質問にお答え頂きました。あわせて深く御礼申しあげます。

教訓

すべて。もし特に挙げるなら、 - 結局のこのこ出ていったLT大会で失敗したこと - 発表の質に格段の落差があったこと(これはよく考えれば悔しい、悔しいにも程がある…) - 手持ちのスキルを換金価値のある技能だと思うことの浅はかさを知ったこと (これは指摘頂いた皆さんのお陰) - 「それだけ?」と言ってくれる人がいたこと:会場で内職をするくらいならデモ環境2,3個くらい作っておくべき! - 技術的に意識低い人、いません。自分のものは、みんな作り込んできます。

せめてハイレベル・アマの仲間入りをする気がないのなら、OSC出展者側に座る意味がないのではないか… 幾度もそんな思いが去来する日々です。 らぐの一員として、もいっかい出直しです。 作り込んだもの、来場者みたそなもの、持てるものを注ぎ込んだ展示物やLTを通して、 未だかつてないバイナリアート空間を演出する…というくらいの気概は持ちたいものです。 自らを鼓舞しつつ「これがOSC駆動開発か!」などと合点する私です。

今回のOSC東京を通して、温かい目をもって小生のあがきを見届けていただいたすべての方に、深く御礼申し上げます。

次こそは、面白い話題をお持ちしますよ!

    9/26    shownet.conf レポーター参加
       (聞いてきてほしいこと、募集中です)
    10/7    東海道らぐ@名古屋 (PoC出します)
    10/22 SUSE.Asia 一般参加します
    11/12   KOF 2日目 (多分発表します)
    来年2/x    OSC浜名湖(発表します)

※誤植と一部の不適切な表現を修正しました(9/17)。